管理人・李小姐が読む、趣味にかたよりありまくりの本達。
読後の感想を書き綴る、この上なく自己満足な読書感想文です。


以前の感想→02年分 03年分
 04年分 05年分 06年分 07年分 08年分 09年分 10年分 11年分

☆最終更新日:2012.5.17.☆

『アンダスタンド
・メイビー』
島本理生
上下巻で700ページある超長編。主人公の黒江(ちなみにこれ、名字ではなく名前)の中学生時代から、紆余曲折を経て高校を中退した後、カメラマンのアシスタントになった数年後までが描かれています。黒江は両親が離婚していて、超多忙な母親との2人暮らし。その母親とは気が合わず、傍目から見ても愛されてない感をバリバリ感じてしまう感じで。だからなのか、中学生の頃から男に依存しすぎ。初めて付き合った彼氏に後に「藤枝さん(これが名字)は男がいないとダメなの?」的発言をされますが、読んでる間中ずっと、私も同じ事考えてた。上巻読んでる時からは一切想像できないような展開が下巻には待っているのですが、そこ読んでようやく過去の経験がかなり大きく黒江の行動には関わって来てるんだな、と理解はできました。が、同意とか共感は全くできず……。唯一よかったと思えたのは、最後の最後で母親と和解する事ができた事。何となく、それなしでは黒江はこれから後にも先にも進めなかったような気がしたので。男性観に共感はできなかったけど、でも、黒江にはこの先幸せになって欲しいなあ……。
『夏草のフーガ』
ほしおさなえ
祖母が倒れ、それが原因で記憶が混乱。自分が13歳の中学生であると思い込んでしまう。偶然同じ中1である主人公は、それと時を同じくして祖母の母校である私立のミッション系女子校に入学するも、ちょっとした事からクラスで居場所を失い、不登校気味になってしまう。祖母が中1だと思い込んだまま同居生活が始まり、その生活の中で祖母の過去にこれまでひた隠しにしてきた秘密がある事に気づいた主人公は、その謎を探るべく動き出す……という話。今作は震災後に書かれたものらしく、だからなのか家族の繋がりみたいなものが色濃く出ていたような気がします。それがあったからこそ、主人公は抱えていた学校での問題に立ち向かう勇気を持てたんだと思う。あの年頃の子がああやって自分の思っている事を、自分を疎ましく思っている人たちに対してぶつけていくというのは、本当に本当に大変だと思う。頑張ったな、と思う。そこにはとても心を動かされました。だけど……おばあちゃんの過去を探っていくところだけは、どうも感情移入ができなくて。もし自分がおばあちゃんだったら……?と考えると、墓場まで持って行きたい、持って行かなきゃいけない事って、絶対にあると思うんですよね。今作ではおばあちゃんは私のような気持ちではいなかったようですが、でも、やっぱり、私なら酷い嫌悪感と不信感でいっぱいになってしまうだろうな……と。ここら辺は個人の考え方の違いで受ける印象が違って来るとは思いますが、すいません、私は受け入れる事ができませんでした。
『キャノン姉妹の一年』
ドロシー・ギルマン
おばちゃまシリーズでお馴染みの著者の作品。社交界デビューも果たしとても恵まれた環境で暮らしていたトレイシーが、理由あって離れ離れで暮らしていた、学校の寮で暮らす妹のティナを迎えにやって来た。叔父が他界し、2人に湖畔の家を遺してくれた事が分かったからだ。両親は既にない2人が、これまでの生活を捨てて湖畔での2人暮らしをスタート。ほとんど手持ちの現金もないまま始まった暮らしの中で、2人は姉妹としての結束を強め、人間力を高め、本当に大事なものが何なのかに気づいていく……。いやはや、やっぱりいいですねえ、ドロシー・ギルマンは!叔父さんが家以外の色々な物を遺してくれていなければ10日で叔母さんたちに泣きつく結果になっていたかも知れないけど、凄いな、と思うのは、ここで暮らすと決めたトレイシーからは、悲壮感だったり諦めムードだったり辛い素振りだったり後悔だったりがが一切見えて来なかったところ。野菜を作る事も編み物をする事も全部図書館の本頼りだったりするんだけど、それでも美味しい野菜ができあがり、近所のおばあちゃんに編んだものを褒めてもらえるようになる。こういう姉がいたから、ティナも一緒になってやってこれたんだろうなあ。途中からは読んでいて頼もしさすら感じたぐらい。読んでいて不思議に癒される作品でした。かなり好きです。
『君に届け 15』
椎名軽穂
修学旅行以来風早くんと爽子が超ギクシャクしてて、そっちの行方もかなり気になる感じなのですが、今回はあやね&千鶴の方にスポットライトが当たってました。あやねはもしかしたらピンなのか……?と思っていたフシもあったのですが、今は断然ケント!という感じ。あやねもケントも他人に対しての洞察力が異常に鋭くて、一見軽い感じに見えて、でも根は真面目。共通点多いような気がするんだよね。あやねはそれに気づいていないけど、ケントはそれに気づいているような気がする。ケントとピンの会話で、ケントがあやねを「不器用」と評し、ピンが正反対の評価を下したところからも、ああ、こりゃケントだわ、と。でも、あやねは今度は自分からちゃんと好きになった人と付き合いたいと思っているだろうからなあ。このまま何気なくケントと付き合い始めると、何かこれまでと全然変わらないじゃん?という気もするし。もう少しじっくり友達づきあいをしてって、付き合うとかはそれからでもいいのかな、と思ったり。対してずっと友達づきあい以上の付き合いをしてきた千鶴は、どうしても龍を男としては見られない。その感じは分かるなあと思っていたんだけど、過去にああいう事があったなら余計、そんな風には思えなくなっちゃうよね……友達どころか、親戚、それこそきょうだいと言ってもいい程、濃いじゃんか……。あああ、難しいなあ。すんげーいいとこで終わったけど、千鶴、どうするんだろうなあ……前進、するのかなあ……。
『ハニーズと
八つの秘めごと』
井上荒野
短編集。仲間だったり、両親の結婚生活だったり、同性同士の恋愛だったり、夫の不倫だったり。恋愛にまつわる話ばかりなのに、そしてこんなに甘そうなタイトルなのに、どれ1つ甘いものがなかった……というのが今作を読んだ感想。まあさ、オトナの恋愛は甘いばっかりじゃないんだよ、っつー事ぐらい、私にだって分かってはいるんですよ。でも、分かっているからこそ、せめて現実ではない物語の中ではちょっとぐらい甘い気持ちになってみたいのになあ、スプーンひと匙分ぐらいでいいから、恋愛由来の満ち足りた気持ちを読んでホッとしたいのになあ、などと、ついつい思ってしまうんだよなー。べったべたの恋愛小説はそんなに好きじゃないんだけどさ、何かタイトル見て勝手に色々想像しちゃってさ。ちょうどそういう感じのものを読みたいと思ってたからさ、若干ガッカリしてしまったのでした、という訳です。でも井上荒野さんは相変わらずとても好きですので、絶対にまた読みます。
『逃亡くそたわけ』
絲山秋子
躁状態で入院中の主人公が同じく入院中の患者と病院を脱走、車に乗って旅に出る、というお話。何か物凄くエネルギッシュで、行動的で、意思的で、とても病気であるとは思えんなあ……と思って読んでいましたが、でも“躁”ってひょっとするとこういう状態を言うのかも、とも思ったり。今作では脱走する事で誰かを傷つけたりする事もなく(強いて挙げれば退院間近だったなごやんを道連れにしちゃったところか)、ぐんぐんと、あてもなく、だけど何かを目指してただひたすら走り続けるところは、ちょっぴり痛快でした。最後にはきちんと病院へ戻る意志も固めたしね。病のある・なしに関わらず、人って時々、こんな風に何かから、どこかからうわーっと逃げ出してあてどなくどこかへ行きたくなる事って、あると思う。そういう衝動みたいなものをバン!と発散できた主人公を、少し羨ましく思ったりもしました。
『太陽のくに』
エヴァ・アスムセン
ヨーロッパの里親の下で暮らしていたラスムスの家族が宝くじを当てる。どうやって使おう?という家族会議の結果、母親から「太陽のくにだ」と言われ続けて来たラスムスの生まれ故郷に旅に出る事に。が、ホテル滞在中大地震に見舞われ、家族とはぐれ、1人放浪生活を続ける事に……。小さな子が到底生き抜けたとは思えないような過酷な状況の中、そこで出会った人たちと見知らぬ生活習慣の中、必死で命を繋ぐラスムス。出会いがあれば別れもあり、更に悲しい永遠の別れもあり……という、本当に波乱万丈な物語です。私、これ、なぜか途中まで、実話だよね?というスタンスで読んでました。こんな小さな子が放浪中のこんな細かい事まで詳細に覚えてるぐらいなんだから、よっぽど心の奥底に深く刻みつけられるぐらい、強力で強烈な記憶なんだなあ……と。ええ、すいません、大勘違い。完全なるフィクションでした。デンマーク人の作者は今作を「恵まれた環境を何もかも当然と思っているデンマークの子どもたちに警鐘を鳴らしたい」という気持ちで書いたそう。警鐘にしてはインパクト強すぎますが……。外見の違うラスムスが同級生らから「ジャップ」と呼ばれるシーンが何度かあり、ああ、そういう差別的な思想は21世紀の現代もまだ残ってるんだなあ……と……。
『甘い水』
東直子
すいません……これ、ダメでした……(涙)。ファンタジー度150%。しかも私が苦手としている方面のファンタジー度が150%(ハリポタとかは大丈夫なので)。章により主人公が変わるのですが、どうも、頭の中にその像を描けないんですよ。とある章の主人公は物凄く小さい人らしく、大きい人がその小さい人の面倒を見ているらしく、後々まで読んでいくとここで大きい人と呼ばれているのが人間サイズで、小さい人は子どもというよりももっともっと小さな大きさの人らしく。それが後々まで読まないと見えてこないので、どうイメージしながら物語の進行についていけばよいのか、さっぱり分からなくて。そこら辺の事がおぼろげながら分かって来ると、パズルのピースがハマったみたいに「おおお!こういう事か!」と開眼する事もあるのですが、今回はそういう事もなく。いやもう本当にごめんなさい。単なる相性の問題かと思いますが、本当にごめんなさい……。たまーにあるんですよね、こんな風に、どうにも受け入れがたし、という1冊が……どうも今作が今年初のその手の本だったようですな……。
『カイシャデイズ』
山本幸久
以前読んだこの著者の本も仕事にまつわる話だったなあ……などと思いながら読み始めましたが、いやー、好きだわー、面白かったわー。内装会社で働くちょっとクセのある3人と、その周囲の人々の目線で書かれた短編集。この、“ちょっとクセのある3人”は、上司でいたり、はたまた部下として周りにいたりすると若干面倒臭いかも、と思う部分もあるのですが、みんな、凄く仕事熱心なんですよねー。でもその熱心さがクセに隠れてしまい、伝わりづらいところがまたいい。無理めと思う案件でも、諦めずに、退かずに、ただひたすらぐいぐい前に進んで行こうとするその気持ちがいい。好きなんですよ、一生懸命仕事する人。世の中には色々な人がいて、自分が本当にやりたいと思う仕事をしている人もいれば、そうでない人もいる。きっと、そうでない人の方が多い。けど、自分に与えられた環境の中でどれだけ自分が納得できる仕事をするか。そしてその結果、喜んでもらえる人がいれば、それが自分の喜びとして帰って来て、次へのモチベーションになる。そんな、当たり前なんだけど、なかなか得る事ができないやりがいみたいなものを、今作では熱く感じる事ができました。
『ユミとソールの10か月』
クリスティーナ・ガルシア
主人公ユミは大好きな祖父、ソールがガンで余命いくばくもない事を知る。ユミはそんな祖父に「これまでに自分が知らない昔のソールの話を聞かせて欲しい」と頼み、彼の幼少期からの人生を振り返る……という話。ユミの家庭環境は複雑で、かつ、学校でも全てが順調という訳ではない。そんな中での祖父のガン宣告なのですが、ユミもソールもとても前向き。ユミは「自分が知らないソールを知りたい」という至極単純な理由で昔話を迫ったのですが、ソールとしては命の期限が知らされた今、自分の生涯を振り返るという作業をする事は、何だか、本当にもう終わりなんだなあ……という実感をより強くしてしまいそうで、しんどい時もあったんじゃないのかなあ、と思ったりもします。でも、何か年配の人って、自分の人生振り返ってみたくなったりする傾向、ありますよね。超一般人の人でも急に自伝書いてみたりとか、あと家系図書いてみたりとか。年を重ねると自分が辿って来た道を誰かに知っておいて欲しい、と思うものなんだろうか。だとしたらユミがソールにねだった事は、彼にとってこの上ない祖父孝行だったのかも知れません。
『図書館ねこデューイ
町を幸せにした
トラねこの物語

ヴィッキー・マイロン
図書館勤務のヴィッキーがその年一番寒かった日の朝、いつものように出勤をすると、本の返却ボックスに小さな子猫がいるのを見つける。デューイと名づけられたそのねこはそれから18年に渡る生涯をその図書館で過ごし、来館する町の人はもちろん、デューイ見たさに全国からはるばるやって来る人々をも幸せにしてくれる。そう、これ実話なのー。暖を求めて返却ボックスへ入り込んだのか、それとも誰かに故意に入れられたのか。どちらにしてもこの図書館に来たデューイは、本当に幸せな日々を過ごす事ができてよかったなあ……と思う。人が好きで、状況判断が出来て、でも確固たる自分の生活スタイルもきちんと持っていて。ヴィッキーが頭に思い浮かべた事は、口に出さなくても、まるでテレパシーで通じるように分かってしまうデューイ。彼はきっとヴィッキーにとって、そして町にとって、ねこ以上の大切な存在だったんじゃないかと思います。最期はもう、涙なしには読めず……。デューイに病気が発覚し、それが不治のものである事、治療しても改善が見込めない事、恐らくかなりの痛みを伴っている事を知ったヴィッキーは、迷わず、躊躇わずに安楽死を選択します(もちろん、18年という長い間、そういう日が来る事はどこかで分かっていて、覚悟もしていたからなのだろうけど)。アメリカではその選択が当然なのかも知れないし、ひょっとしたら日本でもありふれた選択なのかも知れない。けど、私がもしその立場になった時、あんな風に即時に決断できるかなあ……と思いました。そうする事でねこ自身が楽になれるんだと分かっていても、その選択をするのはとても勇気が要るのではないか、と。この件については読後も色々と考えさせられました。結論は出ませんでしたが……。
『ゴールデン・ボーイ』
蒲原二郎
これ、面白かったー!物凄く面白かった!変わった理由でコンサル会社を辞めなくてはならない羽目になった主人公は、知り合いの紹介で議員秘書として働く事に。その議員は衆議院でも参議院でもなく、金議院。選挙はなく、選任委員によって推薦された有識者や財界人が議員になれる、金議院。主人公はセンセイである円城寺の“桃色申告法案”を通過させるべく奮闘するのだが、大きなミスをかましてしまい円城寺を窮地に陥らせてしまう。クビ宣告をされた主人公、さあ、どう出る……?って、あらすじだけ書くと非常にバカバカしい感じ全開ですね……。いや、実際、バカバカしいところもたくさんあって、政界モノではあるけれどとても文体も読みやすいので、するする読めちゃう感じはあります。でもちゃんと、今の日本の政治をひっそりと揶揄していたり批判していたりもする為、ただバカバカしいだけじゃないところがいいんです。登場人物もみんな凄く魅力的だったなあ。ひとクセあって、でも人情もあって。肩に力入れずに楽しんで読める素晴らしいエンターテイメント小説、という感じでした。この著者の本、初めて読みましたが、気に入りました。ぜひ別の作品も読みたい!
『夫婦一年生』
朝倉かすみ
書評か何かで見てチェックしていたものだったと思いますが、これ、よかった。当たりでした。タイトル通り、新婚さんの日々の暮らしが綴られたもの。主人公は結婚するまで実家暮らしで、料理の心得などまるでなし。私と全く同じ状況だったので「わかるわかるー!」と思う事が、本当に本当に多かった。実家での子ども時代、専業主婦の母からされてイヤだった、と思う事を夫にはしないとか、新米主婦としての決め事みたいな事も似てて、だから余計面白く感じたのかも知れません。新婚の2人が非常に飄々としたキャラなので、会話読んでるだけでも面白かったし。やることなすことが“プレイ”みたいだ、というフレーズ、物凄く上手な表現だなあ、と思いました。ホント、いちいちそういう感じなんだよね、新婚生活って。「自分と結婚して本当によかったと思っているのだろうか」みたいな事は、きっと新婚時代にしか相手に直接ぶつける事のできない質問であろうし、きっとこのまま嬉しい楽しいままの生活が続く訳ではないのだといううっすらとした不安も、あの時代にしか抱けない。初々しい時期にしか味わえない楽しさ、嬉しさ、不安や落ち着かなさ……今はもう忘れてしまったものを懐かしく思う気持ちでいっぱいになった1冊でした。
『野良猫ケンさん』
村松友視
『アブサン物語』、だいぶ昔に読み、号泣した記憶があります。そのアブサンの死から15年。他のねこと暮らすとその子が“アブサンの代役”となりそうで、アブサンにも新しい子にも失礼ではないか、という理由で、新しい子を迎えずに来た著者家の外の猫との交流が描かれた1冊です。近所の家で暮らす外にも出る子はともかく、特定の家を持たない子との密な交流はかなり難しいもので、村松家もべったり触れ合う、というような形での交流ではありません。それでも、ご飯を食べに庭に遊びにやって来る外の子たちを眺める時間は、ひとたびねこと暮らした人にとっては何とも言えない実りある時間だったのだろうなあ……と、読んでいて感じます。長い間村松家に通って来ていた、タイトルにもなっているケンさんがたった2度だけ家の中に入ったという話を読み、一体著者はどんな思いで彼を迎えたんだろう……と思うと、胸に迫り来るものがありました。きっと著者は、もうケンさんが現れないであろうという事、分かっているんだと思います。その上でのあのあとがき……本当に、本当に気持ちが伝わってきた、愛を感じるラストでした。
『別れの時まで』
蓮見圭一
とあるきっかけで知り合った編集者と女優。お互いに子がいるが、それぞれ理由があってパートナーは不在。子ども同士も仲良くなり、このままいけばきっといい家族になれる。そんないいムードな中、ある日編集者の元に2人の刑事がやって来て……。まあタイトルがこれですから、絶対にハッピーエンドにはならないだろうな、という事は分かってました。でもその上でどんでん返しはないのか……?と期待してしまう部分もあったりして……。いやー、本当にいいカップルで、子どもたちもいい子たちだったんですよ。あんなきっかけからこんな出会いがあるなんて、こういうのを運命って言うのかもなあ……なんてぼんやり思ったりしちゃうぐらい。あの刑事があんなに押しの強い男じゃなければ。2人共五十嵐のようなキャラであれば、もしかしたらこの2人は幸せになれたのかも知れない……でも、それもまた運命なのかも知れません。過去があって今がある。過去がなければ、今、好きでいる相手だって存在しないかも知れない。それでいいじゃんねえ?恋愛っていうのは、知りたい気持ちをどこまで抑えるか、がキーなのかも知れないなあ……。
『ジュージュー』
よしもとばなな
カバーがイラストで小さな女の子がメインのファンシーめなものだったしタイトルもこんな感じなので、主人公子どもかと思いきや立派な大人でした(笑)。本編に出てくる、なくなったおかあさんが大好きだった絵本の作者と同じ人がカバーを書いているんだなあ。こういうコラボもあるんだなあ。さて、今作は実家がハンバーグ屋である女子が主人公。既に結婚したかつての恋人(しかも超複雑なバックグラウンドを持っている)も同じ店で働いているが、関係性は良好。最近、母親が他界し、更にお店にはビル建設の為に立ち退きの話も来たりする。生きるって日々大変。誰の人生にも平穏な日々だけが訪れる訳じゃない。だけど、祖父の代から続くハンバーグの味だけは変わらず、そしてその味を求めてお客さんも変わらず店を訪れる。変わるものと変わらないものがある中で、変わってしまった悲しい事や淋しい事を癒してくれるのは、きっと変わらないものの存在なんだろうなあ……などという事をぼんやりと思いました。物語が終盤に向かうに連れ、ほんの少しずつだけど登場人物みんなに変化があって、癒されていく感じがあって。例え今日がダメでも、明日は何とかなるかも知れない。明日がダメでも明後日なら。そんなうっすらとした希望のようなものも感じました。嗚呼、それにしてもハンバーグが美味しそうだったなあ……鉄板の上でじゅうじゅういうハンバーグ、食べたくてたまらなくなりました〜。
『ドミノ』
恩田陸
いやー、これ面白かったー!今年一番面白かった。もうだいぶ前に出た作品ですが、以前書評か何かで見ていつか読む本リストに入れておいたものでした。まず最初に登場人物のプロフィールが掲載されているのですが、その数何と27人(プラス1匹)!いやね、面食らいましたよ。うげっ、こんなに出て来るんだ……絶対に全員識別できない自信ある!とか思いましたよ。それがさー、章ごとに語り手が変わる事もあってただの1度も混乱せずに最後まで到達できたのさ。あとがきにもあったけど、これはそれぞれのキャラが本当に魅力的であったからであり、また、著者に自信がないと書けないものでもあると思います。スピード感もあって、謎もあって、ユーモアもあって。で、どうなるの?どこへ向かってるの?何なの?と思いながら、早くページめくりたい!自分の読むスピードが読みたいと思う心のスピードに追いついていないのがもどかしい!と思いながら本読んだの、本当に久々だったなあ。読書って楽しいなあ……としみじみ思ったのも、本当に久々だったかも。恩田陸の小説読むのは初だと思うのですが、今まで手に取らずにいた事を軽く後悔しているぐらい。本当に、本当に超面白かったです!おススメ!!
『ポニーテール』
重松清
未読の作品を手に取る度に「重松清すげえな……」と思うのですが、今作もホントに心からそう思いました。なぜ、どうして、小学生の女の子の気持ちまで分かってしまうのか重松清は!!と。親同士の再婚で姉妹となったフミとマキ。妹のフミ目線で話が進んでいくのですが、マキがさー、何というか、分かりやすい優しいおねえさん、という感じの人ではないんだよね。発言や行動にはきちんと芯が通っていて、そんなに理不尽な事も言わない。だけど無愛想で、言い方や行動が非常に冷たい。やはり小4のフミからしたら、分かりやすく優しいおねえさんの方が絶対にいいに決まってる訳ですよ。そうすればもっと早く仲良くなれるのにって、そう思う訳ですよ。だけどきっと、マキはマキで複雑なんだよね。フミのように無邪気でばかりはいられない年頃だし(でも、フミもフミで凄くこの状況に気を遣ってる。そこがまた切ない)。いやもう本当に、心の細かい動きが何気ない一言や行動に出てて、全員が頑張って家族になろうとしていて、一生懸命で、だけどなかなか上手くいかなかったり、素直になれなかったりで、そこもまた切ない。フミ目線で読んでいた今作だけど、中盤で実は書き手はフミではなかった、という事が明らかにされます。それが分かった段階でもう軽く涙……そして最後の最後でまた涙……今作は泣かされずに済みそう、って思っていたんだけどなあ……く、悔しい……。
『そこへ行くな』
井上荒野
短編集。それぞれのタイトルには場所が冠されていて、読んでみると確かに「ああ……行かなきゃよかったかもね……」と思う場所がたくさん。ただ『病院』についてはそうは思わなかったなあ。まあ確かに一般的にはあんまり足を踏み入れない方が嬉しい場所ではあるし、今作の主人公が病院へ足を向けたきっかけは母親のガンがきっかけだったりもしたので、行かずに済むならそれでよし、な場所ではあったと思うんだけどね。でも、主人公も、病院で親しくなった泉も、お互いの存在でかなり救われた部分があったと思うんだよねえ。他の作品の読後感があまりスッキリしなかったのと比べて『病院』は何と言うか、少し明るい未来が見えたラストだったりした事も、ひょっとしたら印象に影響を及ぼしているかも知れません。『団地』は、何だか凄く怖かった。老人しかいない団地なのになぜ……?と思うような怪しい事がたくさん巻き起こる。これ、解釈のしようによってはホラーだし、ある意味いじめだし、何でこんなとこ買っちゃったんだろう……と私ならすぐ後悔しそうなのに、主人公が私ほどにはダメージ受けていなかった事にも何だか恐怖を感じたのでした。
『終末のフール』
伊坂幸太郎
すんげー昔、単行本で新刊で出た時に確か『王様のブランチ』で紹介されていて、とっても印象深くて、いつか読むぞ!と思っていた今作。もっそい面白かったデス!!8年後に小惑星が地球に衝突するため人類は滅亡する、という発表があり、人々はパニックに陥ります。その発表後、混乱状態がやや落ち着いた5年後を描いた短編集。どの主人公も滅亡の発表の際もさほどテンパらなかったタイプの人々なので、非常に落ち着いていたのが印象的でした。自分がこういう状況に陥った時、果たして冷静でいられるか?そればっかり考えながら読んでました。まあ、恐らく、最初はパニックになるよね。いくら8年後に死ぬからって言って、今すぐ死にたいって訳じゃないし、それなら食べ物とか飲み物とかも必要だし、だからスーパーで買い占めとかもしちゃうかも知れないし。でも、今確実に言えるのは、8年後に死ぬからって、それなら残り8年生きてても同じ、今すぐ死んでやる、みたいな方向には絶対に行かないだろうな、という事。考えてみればこれほど公平な事ってなくない?地震とか天災とかで一部地域の人が犠牲になる、とかじゃなく、地球人全部が死ぬんだもん。病気とか事故とかで突然命を落とすのとも違って、その日が8年後って決まってるんだもん。1人で先に、とかでもなく、1人だけ残されて、とかじゃなく、みんな一緒なんだもん。誰といたいか、どう生きたいか。今よりももっと、それがはっきり鮮明に見えてくるんだろうな、と思います。
『ここがホームシック・
レストラン』
アン・タイラー
著者が書いた本を以前読みとても面白かった記憶があったので手に取ってみたのですがー……すいません、今作はダメだった。シングルマザーとその3人の子どもについて描かれている作品。章毎に視点が変わり、それぞれの立場から見た家族内での出来事や家族観が描かれているのですが、全員が全員、自分のしている事が正しいと思っていて、それに同意をしない他の人々がおかしい、と思ってる。それゆえ、家族はバラバラ。クリスマスにも感謝祭にも誕生日にも、集まって祝おうという気持ちが恐ろしい程希薄。そんな中、ただ1人末っ子のエズラだけがこの状況を何とかしたいと思っていて、事ある毎に経営するレストランでの食事会を提案するのですが、毎回、途中でケンカになったり言い争いになったりして、まともに終わった試しがない……。何かもう、エズラが気の毒でならず……。最終的に母親がなくなり、家を出たまま長い間交流がなかった父が葬儀に呼ばれ、最後の最後で何となくまとまるような感じになるのですが、何でその契機がこれまで家族に何の影響も及ぼさなかった父親な訳?と思うと、何かもう腹立たしくてならなくて。母親、浮かばれなさすぎじゃん……。読んでてひたすらため息しか出て来ない小説でした……(疲)。
『それでも
ドキュメンタリーは
嘘をつく』
森達也
立て続けで申し訳ないのですが、今作も私にはダメでした……言ってる事が私の考えとは相容れず、読んでは閉じ、読んでは閉じて、多分読了に半年ぐらいかかってます。ドキュメンタリー番組は好きでよく観るのですが、結局、ドキュメンタリーもドラマと同じ、とすっぱり言い切られると……。当然プロットはあるだろうし、撮り手の主観が多いに入るし、だから出演者が俳優じゃないだけと言われれば、まあそれはごもっともなんですけども……。何か読めば読む程、考え方の違いが浮き彫りになって来てしまい、読み進める程、この人が撮ったものを観たい、という風には思えなくなって来てしまった。文体が合わなかったというのも、読んでてしんどい一因だったと思います。ごもっともと思うところもあったけど、でも、多分これからも私のドキュメンタリーの見方、受け取り方は変わらないと思います、すいません。
『こころのチキンスープ15
犬が好き 猫が好き』
アメリカでは風邪を引いた際、おかあさんがチキンスープを作って飲ませてくれるらしいです。つまり、心がちょっと風邪を引いている時に読むといいですよ、という趣旨で編纂されたのがこころのチキンスープシリーズな訳ですね。今作はわんこやにゃんこにまつわるエピソードを集めたもの。どれをとっても書き手とわんこ&にゃんこの間に流れる愛情が感じられるエピソードばかりで、心がほんわかと温かくなってきます。四足の子と一緒に暮らしていると、日々本当に色んな行動をしているのが分かります。でも、その行動が今作に登場するようなエピソードになるには、日々共に暮らす我々がそういう行動をきちんと捕らえないと、特記すべき事でもない、何でもない動きの1つになってしまうんだと思う。もちろん、いきものがこちらが受け取る意図と同じ気持ちで行動をしたとは限らないけど、そういう風に想われていると思いたいんだよね、共に暮らすヒト科としては……。いきものを擬人化したり、行動を過剰なまでに人間に当てはめたりする行為をバカバカしいと思う人も多いと思う。そういう人にはおススメしませんが、わんこ&にゃんこ好きの方にはぜひ!!
『Yの悲劇』
エラリー・クイーン
ヒステリックで傲慢な妻を持つ夫の水死体が上がる。その後その妻が殺され、夫と血の繋がっていない妻の前の夫との子もあやうく毒殺されそうに。複雑な一家に次々に襲いかかる危機。警察と元俳優である探偵が捜査を続ける中、探偵は事件解決のきっかけになりそうな手がかりを発見する。が、その手がかりを突き詰めれば突き詰める程、この犯罪を犯した犯人を検挙する事が不可能に……というミステリー小説。まさか最後にこんな展開になるとは……!と、それまでの自分の推理が全く役に立たない!という無力感を感じさせられる1冊でした。割と不仲な家族で遺産もたんまりとある為、誰が犯人でもおかしくない展開。なので大穴狙いである人物を犯人視しながらずっと読んでいたんだけどなあ……いやー、まさかあの人があああ!いやはや、それにしても素晴らしいタイトルつけましたよね、著者。本当に、このタイトルが今作には相応しすぎる……読後、そんな風にしみじみと思いました。ミステリー作品の最高峰と呼ばれる作品らしいですが、その呼び声に偽りなし!な1冊!
『明日がいい日で
ありますように。
サギサワ@オフィスめめ
鷺沢萠
鷺沢さんがあっちに行ってしまってしばらくしてから出された今作は、大好きだったオフィスめめ(鷺沢さんのオフィシャルサイト)の書き込みを抜粋したもの。9・11辺りからあの日の直前ぐらいまでのものが主となってます。リアルタイムで全部サイトで読んでいたはずだけど、長い時間が経ってこうやって改めて読み直してみると、当時は感じられなかった、鷺沢さんが感じていたであろう閉塞感だったり、やり場のない怒りだったりがより強く自分に訴えかけて来たような感じがしました。わたべさんと些細でおバカなことでいつまでも盛り上がったりしていたのは、それが鷺沢さんの本質だったのではなく、そうする事で息継ぎをしていたのではなかったのか、と。今、まだあのサイトが続いていたら、震災だったり原発だったり、相変わらずダメダメな政治だったりに、一体どんな風に言葉をかけていたんだろうか。今、この時代にいない事が本当に惜しいと思う反面、恐らく鷺沢さんにとってはより生きづらい世の中になっているであろう今、ここにいない事はよかった事なのかも、とも思えたり。「自殺とか考えている人は沖縄に来ればいい」と綴ったあれは、ひょっとしたら自分に向けてのメッセージだったのかな……。これで、鷺沢さんが綴ったもので出版されているものは、全部読んでしまいました。もう、新しく目にするものがなくなると思うと、本当に、心から淋しい。
『だらしな日記
食事と体脂肪と読書の
因果関係を考察する

藤田香織
書評家である著者の1年間を綴ったもの。ネット上で連載されていたものを1冊にまとめたもので、もう10年以上前の古いものです。いやー、凄かったよー、これ!長いサブタイトルがついてますが、因果関係考察するとか必要ない!これだけ不規則な食生活で、そしてこれだけの量食べてれば、誰だって体脂肪率40%超えますって!でもなあ、私も、ここまでじゃなかったけど、量的に言えば著者がこれを書いていたぐらいの年齢の頃、このぐらいの勢いで食べていたような気もする。毎食こういう感じじゃなかったところが著者とはちょっと違うけど。そしてだらしなさとか、服に頓着ないところとか、部屋の汚さとかにも物凄くシンパシーを感じます。だから読んでて「あー、分かるー……」ってところが多すぎて多すぎて……。著者が時間と締め切りにルーズなところ以外は誰に迷惑かけてる訳じゃないし……という点も多いので、同じようなタイプの方には「ああ、私だけじゃないんだな……」という妙な安心感すら与えてくれるけど、潔癖症だったり物事をキッチリとこなさないと気分が悪い……というような方にはおススメしません。著者とは何だか読書の趣味も合いそうだったので、出て来た本のいくつかをいつか読むリストに加えられたのも、私にとっては非常に楽しかったです。
『やっぱりだらしな日記
+だらしなマンション
購入記』
藤田香織
『だらしな日記』続編。相変わらずのだらしな&暴食っぷり、読んでて清々しいぐらいです。今作はそれプラス、タイトルにもあるマンション購入記も。帯にもありますが、蕎麦を食べに行ったついでにマンション衝動買いしちゃってるんですよこの方……。んもーホントに凄い!豪快!!でも、意外にそんなもんなのかなあ、とも思う。実はうちも今住んでるところに越して来る時、他の物件とか一切見ないでここだけ見て決めちゃったし。で、取り立てて今大きな不満とかなく暮らしてるし。都合よく言えば“縁”みたいなもんじゃないのかなあ、と。藤田さんはマンションの契約をした後、他のマンションの見学にも行っていて若干「早まった……」的気持ちも抱いたようだけど、何か、家とかって、見れば見る程分からなくなるような気がするんですよねー。あっちの家はここがよかったけど、あそこはダメで、でもこっちの家はそこがいいんだけどあそこが……みたいなさ。気に入った場所に土地買って設計に1から携わる、ぐらい気合入れても、もしかしたら後々不満に思える場所が出てきちゃうかも知れないし。オプションを色々とつけちゃう感じは、結婚披露宴に似たものがありますね。「一生に一度の事だし……」的な。いやはや、今作も本当に興味深くて面白かった!断食合宿に参加した日記も巻末にありますが、しかしどうしてこうも体脂肪減らなかったかねえ……不思議ー。
『キム兄の食日記』
木村祐一
鷺沢さんの本読んでから、空前の日記ブーム到来!という事でまたも日記。キム兄が食べたあれやこれやが綴られた1冊。超リーズナブルなところもあれば、多分一生かかっても行けない(行かない)だろうな……と思うようなお高いお店まで、さすがキム兄、いろんな店知ってるなー、という感じ。あちこちでレギュラー番組を持ってると収録の為に地方に行ったりもするので、大阪や名古屋の店もとても多かったです。逗子のイタリアンとか落合シェフの店、行ってみたいなあ。串揚げ、お好み焼き、美味しそうだなあ……と、読んでる最中はもう食べ物の事が頭の中をぐるぐるしまくって、お腹鳴りまくり……。料理が上手になるには美味しいものを食べに行かないとダメ!とよく言われますが、料理好きなキム兄は外食先で美味しいものに出会うとちゃんと作り方聞いたりしてるんですよねー。さすがです。外で美味しいもの食べて「うひょー!」と思っても、それ自宅で再現しようとは思えないんだよなあ、私。「自分で作るよりこれはこのお店で食べた方がいいよね!」という発想になってしまう。料理上手とそうでない人の差をまざまざと見せつけられた感じがしました……。
『なにたべた?
伊藤比呂美+枝元なほみ
往復書簡

伊藤比呂美
枝元なほみ
友人同士であるという2人のFAXレターをまとめたもの。……と書いてお分かりのように、今作が初めて世に出たのは前世紀の事。だよねえ、最近のものならFAXなどではなくメールになってるはずだもん。その、FAXの手書き感が今作には物凄くよく出てる気がします。てにをはぐちゃぐちゃだったり、文章としてこれはちと……と思うものだったりがいっぱい。特に伊藤さんの方にそういう傾向が見られる。私、手紙でもメールでも、誰かに何かを書き送る時は、たとえカジュアルなものでもてにをはとか、あと語尾に同じような言葉が続かないようにするとか、そういう事物凄く気にして文章書いていくタイプなので、そこんとこに若干の気持ち悪さを感じつつ、でも、この2人はそういうものを送り合える仲なんだよな……という友達としての距離感も強く感じつつ。巻末に文庫化にあたっての最近の2人のメールのやりとりも掲載されているのですが、やっぱ、そっちの方は手書き感が薄いというか、推敲してる跡が見えるというか。綺麗にまとまっちゃってるっていうか。面白さという意味では断然FAX時代、でした。枝元さんはテレビで拝見する限り、本当にほんわかしたやわらかーいイメージの人だと思っていたのですが、今作ではちょっと過激だったり、攻撃的なところも出てたりする。激しく恋をしていたりもする。そういう『きょうの料理』では絶対に出て来ないところも見えて来て、非常に興味深く、面白かった。こういう、何事もぶっちゃけ合える友達同士、凄くいいです。こういう人がいるだけで色々頑張れる部分、絶対にあると思います。
『日々ごはん@』
高山なおみ
著者は料理研究家。結構本好きな人でもあるようで、なので料理の話と本の話、両方読めるのは私にとってちょっとお得な感じでした。さすが料理研究家だなー……と思うのは、夕飯作るのが面倒なので簡単に……とか言いつつ、ちゃんと一汁三菜(時にそれ以上)のものが食卓に並んだり、ちゃんとドレッシング手作りしてたりするところ。ここら辺はやはり料理を生業とする人なのだなあ……と思わせられる。あと「料理をしないと何だかちょっと調子が出ない気が」みたいな事も書かれてました。料理をする工程で元気が出て来る、みたいなニュアンスの。でもそれって、ひょっとすると自分で作った料理をその後でちゃんと食べるから元気になる、って事なんじゃないのかなあ。料理をする、って事は、ちゃんと素材を切ったり炒めたり混ぜたりしなくちゃならない訳で、お湯かけて3分待てば完成!って訳じゃないもんね。栄養価の面から見ても違いは歴然だし。少なくとも私は料理をする行為では体調よくなったり、元気になったりはしません(そりゃ私が料理が好きじゃないからでしょーが)。ネットにアップされた日記をまとめたものだそうですが、これまでに読んで来た色々な方の同様のコンセプトの日記と比べると、文体も含め、何だか綺麗にまとまり過ぎている気がしました。あんまり、日記としての生々しさがないというか。そこが私にはやや物足りないところだったかも。
『富士日記 上中下』
武田百合子
トータル1500ページ近い作品。作家武田泰淳と共に足繁く通っていた富士山近くの山荘での12年に渡る暮らしを綴った日記。その日食べたもの、買ったもの、出かけた先、訪問した客などが綴られています。東名も中央道もできていない昭和30年代後半に、本当に足繁く東京−富士間を往復してるの。しかもこれ読む限り、日々の運転は全て百合子がしている。車に関するトラブルも全部百合子がどうにかしてたりする。当時としては相当かっとんだ女性だったのではないかなあ、と思われます。この日記は泰淳から勧められてつけるようになったとあり、本人はあまり乗り気じゃなかったようなのですが、でも、文才あるんですよねー。特に景色の描写が素晴らしい。私は景色を見ても「ふーん」とか「わー、きれいきれい」ぐらいの感想しか抱けず、なので当然それを描写しろと言われても無理ー、なのですが、百合子はそれが自然に書けちゃってるところが凄い。やはり作家と共に暮らしてると感化されるものもあるんですかね。だって今作、元々表に出すつもりで書いてた日記じゃなかったらしいんですもん。他者の目を意識せずに書かれたものがここまで文学的だなんてさー。すげえよー!!本当に、一瞬たりとも飽きる事なく読了、となりました。もっそい面白かったー!!このところ、ずっと日記っぽいものばかり集中して読んでいたのですが、家にある在庫で日記風なのはこれがラスト。日記シリーズ、締めくくりが今作で本当によかったー。
『箸の上げ下ろし』
酒井順子
食にまつわる酒井さんのエッセイを読むのはもう何度目だろう。でも、切り口が全然違うので全然問題なしに楽しめます。さすが酒井さんですなー。野球場でつい買い食いしてしまう件、「分かるーーー!」と激しく同意し、料理本や調味料の死蔵の件では「……ええ、おっしゃる通り全くもって同じです……」と反省。換気扇おじさんの件は心底羨ましく思い、給食の今思うと謎な組み合わせや、学生時代の母の弁当を懐かしく思い。無洗米への抵抗感や大晦日の食事の件には、深く頷かされました。ラストにあった“最後のごはん”はなあ……度々考える事ではあるけれど、未だに「これ!」といった絶対的なものが浮かんで来ません。一時は巨大なハンバーグ(付け合わせににんじんグラッセは乗せてはならない)、とか思っていた事もあったのですが、加齢のせいか、そういうこってりしたものよりはやっぱり和食で……とか思いつつある昨今の私……。やっぱり、白いご飯と味噌汁、納豆、あたりになるのかな……。
『砂時計 全10巻』
芦原妃名子
夏帆ちゃんと松下奈緒ちゃんが主演の映画を観てずっと原作読みたいなー、と思っていたらば、ブックオフの105円コーナーに全巻あるのを発見しオトナ買い!という事でずだだだだーっとまとめて読みました。いやー、止まらなかったわー。好きだわー、これ。親の離婚で東京から島根に越して来た杏と、そこで出会った大悟との恋物語。12歳から26歳までの2人の紆余曲折が描かれているんだけど、これがまあ、一筋縄では行かんのさ。幼き頃の約束はとかく口約束になりがちで、中学生で付き合うって言ってもさー……的な気持ちもあれど、2人共、特に大悟は杏を支えようとする気持ちが本当に強くて、嗚呼、ピュア……ピュアすぎる!!と読みながら何度口走った事か!ここまで相手の事を想える2人なんだから絶対に上手く行って欲しい!絶対に!!と、2人が離れてもなお、ずっと思いながら読みました。映画観てたので筋は知ってたんだけど、時々原作とは違うラストになる事もあるので最後まで油断はできず……でしたが映画で観た通りで終了。読み終わってまた映画観たくなっちゃたので、近々また観るつもり。初老になってもこういう少女マンガのピュアさ、王道さはやっぱり好きだな。こういう嗜好性は年取ってもあんまり変わらないんだな……と実感。105円コーナーじゃなく、ちゃんと書店で買って揃えてもよかったかも……そう思える作品でした。本編の物語自体は8巻で終わり。残り2冊は番外編ですが、どれも非常によかった。特に杏と大悟の母親たちの若かりし頃の話、凄くよかったです。
『君に届け 16』
椎名軽穂
風早ぁ!んもー、おのれもどかしいのぅー!という気持ち全開!ケントにあれだけきっぱりはっきりと「あげないよ」と言い切る気持ちを持っているのに、どうして爽子を不安にさせるような態度ばかり取ってしまうのか!……まあ、あれだな、男子ならではの逡巡なんだろな。修学旅行でのキス未遂がなければ、きっと今こんな風にはなってないんだろうねえ……「別れ話されるのかと思った」とか思うなら、さっさと先に進んでおしまい!と、風早には言いたいです。でもそれよりも今回私の心に刺さったのは矢野ちんなんだよーーーー!爽子と話してた辺りでは涙止めるの大変だった……ホント、何であそこまで自信が持てないのだろうか。これまで爽子や千鶴の事ではあれだけ尽力し、アドバイスもくれ、みんなが幸せに向かう方向へ導いてくれた矢野ちんなのに、どうして自分が幸せになる方へ一歩を踏み出すのに、あんなに戸惑ってしまうんだろうか。相手がケントだったっつーのもあるんだろうなあ。チャラ男だし。でも風早に相談するぐらいマジみたいですよ、ケントは。もうホント今作に出て来る人々にはみんな幸せになって欲しいんだけど、とり急ぎ今一番気にかかるのは矢野ちんなのであります。嗚呼、早く続き読みてー!コンビニで一瞬別マ手にしちゃったぐらい読みてー!!!!!