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オペラについてのエッセイ

「優雅なインドの国々」との遭遇(優雅なインドの国々)

しばらく悩んだのですが、やっぱり書くことにしました。ラモー作曲のオペラバレエ「優雅なインドの国々」。 スカパーのシアター・テレビジョンにて、2005年3月間に放送されているものを見ました。
それがおもしろいのなんの、って半端じゃないんです。これほどひとつのショウとしておもしろいものははじめてです。
オペラバレエってはじめて知ったんですが、オペラの中で、バレエが入るシーンを初めから考えて作られた作品のようですね。歌などの演技の間の音楽が、踊ることを念頭に作られているようでした。たぶん音楽の形式として、踊りの音楽の形式なのではないかと思うのですが、知識ないので分かりません。

まず、タイトルから、何の話?と思わずつっこみを入れてしまう、この「優雅なインドの国々」。 「優雅なインド」、まではいいんだけど、「の国々」って何よ?「国々」?
何故に複数形?インドはインドでしょ?
とりあえず、番組紹介も読まずに見てみると、一幕ごとに舞台となる国が違うらしい。
寛大なトルコ人、インカ、花々、未開人、の全4幕。
ってどこがインドなのっ?せめてインド周辺かと思ってたのに、全然違う。
花々と未開人はどこの国かわからなかったのですが、歌詞の字幕とメイキング番組をあわせると、順にペルシャ、北アメリカ大陸のインディアンを舞台に設定していることが判明!
ようするに、インドとは当時のヨーロッパ人にとっての、ヨーロッパとアフリカ大陸以外の世界だったわけです。(つづく)

さすがはパリだ!(優雅なインドの国々)

その1では、どこの劇場の、とか、誰の指揮、とかオペラのソフト的に重要な事項を書かなかったので、ここで書きます。
「優雅なインドの国々」
作曲:ジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764)(バロックの作曲家でフランス人)
2003年:パリ・オペラ座
指揮:ウィリアム・クリスティ
演奏・合唱:レザール・フロリサン
演出:アンドレイ・セルバン
振付:ブランカ・リー
舞台装置・衣装:マリーナ・ドラキチ

バロック期に作られたオペラは、おしなべて長い間上演されずにいましたが、近年再演がずいぶんと進みました。この舞台もその一環で、録画は2003年ですが、もう何年も前から繰り返し上演されているようです。ドキュメンタリーを見て、ツアーで50回は上演したことが分かりましたが、今ではさらに回を重ねているのでは?と思います。 上に書かなかったのですが、この舞台で重要な役割を担っているバレエは、おそらくオペラ座所属のバレエ団なのでしょう。(記述が見つからなかったんで)

日本では「優雅なインドの国々」は、完全な上演がまだされていません。演奏会形式(オーケストラと歌のみ)で、第4幕が演奏されたことがあるようです。このパリ・オペラ座の舞台の引越し公演は難しいと思うので、ぜひ日本版を新国立劇場主導で作って欲しいものです。バレエ団を抱えるオペラハウスでなければ、この企画を実現できませんから。
んでもって、振り付けは勅使河原三郎希望。 (つづく)

アンコールは歌って踊って(優雅なインドの国々)

では、今回はこの舞台のどこがおもしろかったのか、という点を挙げていきたいと思います。
音楽は、オーケストラの演奏もすばらしく、歌も、非常に難しい歌であるにもかかわらず、すべての歌手が見事な歌唱をみせてくれる、という本当にすばらしいものでした。
ウィリアム・クリスティ率いるレザール・フロリサンは、長年さまざまなバロック音楽を復活させてきたとあって、程よい緊張感と激しさを持ち、バロック特有のテンポ感も自然で、歌うように演奏されていて良かったです。
ソロの歌手達は、総勢17人ととても多いのにもかかわらず、誰一人ビブラートなどかけず美しい声で、細かいトリルも正確に歌いきったという、最強の布陣(?)でありました。そして、演技もすごかった!!もちろんオペラ歌手は演技をするものですが、半端じゃなく動く動く踊る踊る。特に目を引いたのは、エベ役のかわいらし〜い動き、ベローナ役の飛びげりと歌いながらの片足立ち、ツィマ役の歌いながら腰をまわしたり、身振り手振りに飛び跳ねたり、といったところでしょうか。
バレエは、振付のブランカ・リーのセンスによって、片時も目を離せないすばらしい出来でした。もちろんダンサー達も、曲の流れに乗って、エネルギッシュな踊りを見せてくれました。序幕は割と普通のバレエという感じを受けたのですが、幕が進むごとにだんだんエキセントリックなものになっていった気がします。私のお気に入りは、第3幕「花々」で、頭に草の被り物をして、植木鉢を抱えて踊るところです。
音楽と振付の融合によって、もっともおもしろいシーンとなったのが、第4幕「未開人」の終わりのほうで演奏される「平和の森」の歌の部分でしょう。ツィマとアダリオが前面に出て、その後方に合唱団がいて、歌い踊るわけですが、野性的な音楽とあいまって、すごい迫力でもって引き込まれます。私の中で、これはベストナンバーです。もう、ものすごく好きで、延々とリピートして聴いていたいくらい。そして、私も歌って踊りたい〜と思う素敵な曲です。こういう緊張感と躍動感とが同居している曲って大好きです。
そして、舞台装置と衣装ですが、色鮮やかな印象の舞台と、絵の中の世界のような装置が、この作品のスペクタクル効果を上げたことに間違いはありません。絵本の中の世界みたいなところがある点が、一気に観客を「優雅なインドの国々」の世界へ連れて行ってくれます。パリのオペラはいつも、他のどこの国よりもおしゃれなセンスある衣装で、私は大変気に入っていますが、今回も素敵な衣装でした。 やっぱり舞台芸術ですから、見た目の印象も重要だと思うんです。
もちろん、もともと作品がウィットに富んだものである、という点も見過ごせません。が、それについては歌詞を引用しなければなりませんから、やめておきます。歌詞に関係ないところでは、ベローナ(女神)役がバリトンだったり、ヴェーヌスの息子の愛の神役がソプラノ(メゾかも)だったり、と明らかにウケねらいな設定なんです。 (つづく)

愛の勝利が平和を導く(優雅なインドの国々)

やっとこさストーリーの紹介にたどり着きました。
ストーリーは、オペラにありがちな、とーっても簡単な話です。ただ、幕ごとの小さなお話を集めた、という点がめずらしいと思います。これはやはり、話の筋よりもスペクタクルショウであることを前面に押し出して作られたことから来るのでしょうね。
まず全体は、序幕、第1幕、第2幕、第3幕、第4幕からなっています。

序幕:愛の神エベが、戦の神ベローナによって戦争に心を奪われていく人間達の現状を嘆き、その心を愛に向けさせようと、愛の神々に呼びかけます。
そして、愛の神と人々の心へキューピッドの矢を撃ちに、世界へと旅立つのです。

第1幕:そうしてやってきたトルコの国。支配者オスマン殿下は奴隷のエミリを愛しています。が、エミリには実は新婚の夫がいました。でも、彼は遠い故郷の国にいて、彼女を迎えに来るとは思えません。そんな弱みにつけこんだオスマン殿下は、エミリを口説きに口説きます。でも、彼女はずっと拒否していました。
そこへ、突然の嵐、彼らの船は遭難してしまいます。海に投げ出された人々、彼らは運良くもひとつの浜へと辿りつきました。そこで、エミリは夫ヴァレールと再会するのです。愛を確認しあう二人のもとへ、オスマンが現れます。そしてオスマンは、ヴァレールが奴隷であるエミリを連れ去ろうとしていることを知り、罰を与えねばならぬ、というのです。
しかし、実はヴァレールはオスマンが奴隷だったときの主人で、オスマンは自由にしてもらった恩を忘れず、二人に自由を与えます。
ということで、二人は幸せに故郷へ帰っていきます。おしまい(そこで身をひいたオスマン、君はいい男だ!)

第2幕:お次は、スペイン人に征服されたばかりのインカ帝国。太陽神官ユアスカルはインカ人の娘ファーニを自分のものにしようとしています。でもファーニはスペイン人ドン・カルロと恋に落ち、ドン・カルロは彼女をユアスカルから自由にしよう、と約束しました。そして、そのために彼は仲間を連れて来ると言って出かけていきます。(っていうか、ここで駆け落ちすれば話は早いのに、って思いますよね?でもファーニは太陽神官であるユアスカルの力、神の力を信じているのです。だからただ逃げるだけでは彼女は不安なわけです。でも、スペイン人の科学の力で神の力は破壊されると思っています。)
さて、ファーニが一人のところをユアスカルが放っておくわけがありません。彼は、自分の妻とならなければ神の怒りが下る、となんとも強引な迫り方をします。そして、あらかじめ部下に火口へ岩を落とさせて、意図的に火山噴火を起こさせるようにしておき、噴火は神の怒りである、私と来れば安全だ、などと言うのです。
かわいそうにファーニはユアスカルに疑念を抱きながらも、確信できず、混乱してしまいます。が、そこへ颯爽とドン・カルロ登場!!ということで、めでたしなわけです。(地位を利用し、策略をめぐらし、人を恐怖で支配しようとする悪者には罰が下るのだ!)

第3幕:舞台はトルコ。婚約者がいるにもかかわらず王子タクマは、友人アリの奴隷ツァイールに恋をしています。ツァイールは奴隷の身でありながら、王子に恋してしまったことに苦しんでいます。さらに、アリは王子の婚約者に恋をしています。そしてそして、婚約者ファティムは王子ではなくアリに恋をしていました。
そんな中、王子は女装をして、ファティムは男装をして、それぞれの想い人の気持ちを確認しようとします。それが引き起こす騒動!王子はファティムを恋敵だと思うし、ファティムはアリの気持ちを王子から聞きだそうとするし、アリは王子に協力しつつファティムへの想いを告げようかと悩むし。
とにもかくにも、最後には変装の事実も、それぞれの気持ちも、すべてが明らかになって、ここに二組のカップルが生まれ、皆、花の祭りへと繰り出すのでした。(めでたいめでたい)

第4幕:ついに、最後の舞台、インディアンの国へとやってきました。若き長(?)アダリオは、インディアンの娘ツィマの恋人でした。しかし、そこへフランス人ダモンとスペイン人アルヴァールがあらわれ、ツィマへの求愛をしていました。彼らの行動をひとまず影で見守ることにしたアダリオは、ドキドキしながら覗き見。そんな中、話は進んでいきます。
アルヴァールもダモンも言葉とプレゼントとを駆使して、ツィマの気を引こうとしますが、ツィマに軽くあしらわれています。そして、二人がお互いをけなしながら、さらに言い寄ると、ツィマは浮気な夫(フランス人)も嫉妬深い夫(スペイン人)もいりません!と、アダリオを選びます。そして、ツィマとアダリオの二人が、静かで確かな愛のもとへ、結婚の神よ来い、と歌います。(おしあわせに)この後、私のお気に入りのシャコンヌ「平和の森」が演奏されます。
これで、第4幕のお話は終わりですが、そのまま全体のフィナーレへ突入します。 ツィマが再び出てきて、愛の神の勝利を高らかに歌います。そして、戦の神ベローナは破れ、世界を愛と平和が包み、物語はしずかに幕を閉じていくのです。(そして観客は名残惜しくも夢から覚めるのでした。)

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